行事用の音楽

一月も後半になり、そろそろ学校や保育園、幼稚園で発表会、お遊戯会の季節がやってくる。心音舎でも行事用の音楽の製作、編集業務を行っているがご依頼の前に(心音舎でなく他の業者に依頼する場合も)読んでおいてほしい内容をまとめてみた。

本当にオリジナルな要素が必要ですか?

もちろん業務なので請け負った仕事はこなすのだけど、「そこは普通に既存のCDをかけてもいいんじゃないのか?」というケースがある。せっかく安くはない料金を払って製作、編集を依頼するのだから、もうちょっと「ここぞ」という場合に使ってみてはどうだろうか?

これは請け負いたくないわけではなく、行事の計画書、プログラム、進行表を見せてもらうと「力の使いどころが少し違う」という場合がよくあるのだ。もちろんそういう場合は僭越ながらアドバイスをさせていただくが、この文章を読むことで教育関係者の方に音楽製作の現場でできることとできないこと、簡単なことと難しいことを知っておいて欲しい。

できることとできないこと

時々あるのが「CDから歌手の歌を無くして子どもの声を入れたい(もしくはカラオケを作りたい)」というもの。今はシングルCDの場合、カラオケバージョンがおまけで付いてくることもあって依頼は減ったが昔は多かった。厳密に言うとそれは「不可能」です。ただ「それっぽく」作ることはできます。人間の声の周波数帯で中央に定位している音をカットするのです。上手くやると歌手の声は遠くで小さく鳴っているように聞こえます。

ただそれも程度問題で、派手にカットすると音楽全体がキンキン+モヤモヤの状態になり聞いた感じが全く違ってしまいます。またCDによって特殊効果のように(わざと)ヴォーカルを左右に振り分けていたり、特殊なエフェクトがかかっていたりすると全く消えません。

簡単なことと難しいこと

音楽によりますが舞台やプログラムの進行上、曲の一部分を繰り返して長くしてほしい。もしくはカットして短くしてほしい、ということは割と簡単にできることです。曲の最後をフェードアウト(段々音量が小さくなる)にしてほしいというのも同様です。よく言われる問題に曲の繰り返しで子どもの準備が整ったら繰り返しが終わるようにしてほしい、というものですが、これは無理です。繰り返し回数を決めておいて出場者があわせる方が簡単です。

逆に「この曲はフェードアウトしているのできちんとした終わりを付けてほしい」ということは大変難しく、場合によっては無理です。気持ちは大変わかりますが音量が小さくなっている部分のレベルを持ち上げてもエンディングは出てきません。まずエンディングを考えアレンジし各楽器を録音しくっつけることになります。これではほとんど編集ではなく製作依頼になってしまいます。

また似たような曲、テンポがあまり違わない曲をくっつけてスムーズに切り替えることは簡単ですが、静かな曲から激しい曲へ、その逆などはスムーズにはいかないものです。そのような場合は思い切って一回フェードアウトして次の曲にする方が聴感上の不自然さは減るようです。

BGM

意外とないがしろにされがちですが、歌う、演奏する以外の場面で小さめの音量で音楽を流すことは効果が大きいものです。劇でも場面に応じた音楽を流すことで進行を助けることができます。これは本当に実践しているところが少ないのですが、別にお金を払って音楽を製作しなくても「何か鳴っている」ことが重要なのです。何も音が鳴っていない舞台を見るのは(それが意図的な静寂でなければ)見ている方がハラハラしてしまいます。落ち着かず緊張状態を作り出すのです。

オリジナルではなく手持ちのCDやレンタルなどでBGMをながす場合注意する点がいくつかあります。

・場面にあった音楽にする
いくら好きな曲でも、その場面にあっていなければ逆効果です
・みんながなるべく知らない曲にする
有名な曲だと聞いた人は元のイメージに引きずられてしまいます
・特徴の無い曲にする
意外でしょうが皆が感動する名曲をBGMに使うとそちらに注意が引きつけられてしまいます
・歌入りは避ける
歌詞がよほど合っていれば別ですが劇では出演者の声が全てかき消されてしまいます

他にもいろいろと注意点があるのですが、特に大人のしっかりした演技や出し物と違い、子ども達の力量の邪魔をしないように、そしてサポートになるように心がけてください。