受動的な音楽療法

音楽療法というと聞くだけだから受動的なものじゃないの?と思われる方もいるでしょうが、自分で演奏したり歌ったりするタイプのものを能動的、聞く事に重きをおく方を受動的と定義しています。

意外でしょうが、この聞く事主体の音楽療法は最近までなかなか主流にはなりませんでした。音楽療法の始まりは音楽を流すことから始まったのですが、、、

もちろん導入もしやすく(音楽を聴くだけでも開始できます)実践もしやすいので多くの場面で見られました。正確には「重要なものと位置づけられてこなかった」「正当なものと見なされなかった」という方が正しいでしょうか。

これには幾つか理由があります

  1. 音楽の好みが人それぞれである
  2. 同じ音楽を聴いても人によって感じ方が違う
  3. 能動的音楽療法と違い即効性の効果が現れにくい
  4. 効果自体の検証がしにくい

などです。他にも学問として体系化しにくい、聴き終わった後の持続的な効果が疑問視される、音楽自体の選択肢が多すぎる等の理由もあるでしょう。

音楽療法は療法という名前がついていますが、代替医療、もしくは補完医療という位置づけです。悪い言い方ですが、おまけや補助のような位置にあります。受動的な音楽療法はその中でも更に補助的な役割として捉えられてきました。

もちろん効果は実証されていますし、音楽を聴いて何らかの影響を受けることは誰もが経験することでしょう。ですがそれは幾つかの条件が重なった場合の限定的な効果であることを忘れてはいけません。

音楽を聴いて体や心をケアするという行為は、ある一方からは「効果があるわけがない」と言われ、一方からは魔法のように何にでも聞く医療行為のように思われますが、どちらも間違いです。

軽視もせず過度な期待もせず、守備範囲をわきまえることが大事です。何よりも重要なことは受動的音楽療法が手軽に簡便に導入できるということです。劇的な効果は望めないにせよ、これは大きな利点です。

そのため、楽器演奏や歌うことが難しい高齢者や手足や発声器官に障害を持った人達のケアにも有効です。(ボディソニックなどを使い聴覚障害がある方にも応用ができます)

「音楽の好みが人それぞれ」という点への対応は、その場で本人の表情や動きを観察しながら即興で次々と音楽の内容を変えていく方法があります。またそれ以上に対応するために入念なカウンセリングと意識調査が加わることもあります。

これには熟練した即興能力のある演奏家や、対人スキルの高いカウンセラーの能力も問われます。もちろんそれは重要なことですが、「気軽にできる」という利点がいささか相殺され気味でもあります。

そんな音楽を聴く受動的音楽療法は、これからの時代、携帯用音楽機器やコンピューターで膨大な音楽を手軽に試せる、切り替えられる時代に改めて脚光を浴びるかもしれません。

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